院長の独り言 382 ; 横浜の港で、サッパ釣りをしていた頃
皆さん『サッパ』と云う海水魚をご存知ですか。
お寿司屋さんに行くと必ずネタで置いてあるコハダ(このしろ)と瓜二つで、このコハダと見分けが付け難い魚、ママカリの別名が『サッパ』です。
コハダも、サッパも、ニシン目ニシン科に属します。
コハダは前述したように寿司のネタとして、全国各地のお寿司屋さんに置いてあるポピューラーな魚です。
サッパ、別名ママカリは、岡山地方だけで好んで食され、通(つう)の人以外には、あまり全国的には知る人はいません。
私が大学生の頃、ほんの一時期でしたが横浜に住んでいた事がありました。
丘の上にある公団住宅風の家でした。
家の窓から横浜港が霞んでしか見ることは出来ませんでしたが、下の住宅街を見下ろすようで、良い眺めを楽しんでいました。
横浜に住んでいた人には理解できるでしょうが、横浜は坂道が多く、丘の上の住宅が大変多いのです。
イタリーやスペインの街に少し似ているところがあります。
そのことが関係しているのか、どうか分かりませんが、昔から外人に人気のある街で、多くの西洋人が住んでいるのです。
横浜に住んでいる大学の同級生で、特に仲の良い友人がいます。
今でも親交が厚く、同じ職業な上に、ゴルフでは、お互い上手くはないけど一応、ライバルです。
その友人ですが、彼の幼い頃、彼の実家の直ぐ傍(そば)に絶好の釣り場の岸壁があるので、彼は釣りを趣味としていました。
小生が横浜に引っ越した関係上、休みの日など、二人でよく魚釣りをしに、夜霧にネオンが浮かぶ横浜港山下埠頭に行きました。
そして、夏の終わり頃になると、サッパ釣りに出かけていました。
サッパの釣り方は非常に簡単です。
殆どの人は、サッパ釣りなど興味がないでしょうから、釣り方なんかご存じないと察します。
要するに、釣り竿と針だけ用意すれば良いのです。
何しろ餌もいらないし、しかも入れ食いなのです。
サッパはジャンジャン釣れます。
直ぐにバケツ一杯になります。
バケツ一杯になると、みんな逃がしていました。
夏の終わりになると、今の横浜港では信じられないでしょうが、当時の山下埠頭には、殆どひとがいません。
今から50年も前は、本当に静かな港でした。
勿論、日曜日や祭日は、家族連れやアベックなどで、たくさんの人出がありましたけれど。
あの大学生の頃の横浜港岸壁を思い出すと、懐かしいと言うより胸がキュンとなってしまうのです。
当時の日本社会には、厳然として、貧困が存在していました。
それが頭の重しとなり、将来への漠然とした不安が、若い私を苛んでいました。
しかしサッパ釣りの時だけは、それらの雑念を忘れ、友人とひたすら釣りに没頭できました。
今の若い人も、同じような不安に苛まれている事でしょう。
そこで私からアドバイス。
まず目の前のやるべき事を、真面目に誠心込めて、周りの人たちと協力して、そして感謝して、成し遂げて下さい。
そうすれば、君らの未来は、決して暗くはないよ!
君らは、決して独りではない。